五月雨日記<仮の宿>

イラスト+漫画やアニメの感想等。 最近はプリキュアと東方多めです。

例のキュバート視点の回想。


キラキュバ、キララゼの出会いと絡みは私が勝手に想像してみた(笑)
キラキュバの絡みは私に委ねてくれたのかも?とも思いつつ。




オレは昔大怪我を負った時、大部分の記憶を失った。
大怪我の後もしばらくの記憶が曖昧だ。
記憶というものはいつ突然、なくなってしまうか分からない。
今後、事故に遭ったその事実さえ、忘れる事もあるかもしれない。
その時……あらゆる人の事や思い出も忘れてしまう可能性はゼロではない。


移植された右目の持ち主や自分を助けてくれた恩人を見つける手がかりになる
かもしれない……それも今日の事をこのノートに書き記す理由ではあるけれど、
「今覚えている事」そして「これから」を、オレは忘れたくない。


全てを覚えている事は不可能だと分かっているし、
「今日」の記憶も時の流れと共に徐々に薄れていく。
だから「今日」が終わるまでに「今日」も記録に残していく。思い返して書き留める。
記憶が消えてしまったとしても、その人と一緒に過ごした時間は確かにあったのだと。
些細なでき事の一つ一つを、その人のページに。
例えば今日は――庭園科の模擬戦の治療という形で、先輩達と集まった時の事……。



「感じやすい部分はぁ……どこかしらぁ?」
それは、キラ先輩と初めて会った時の事。
初めて会った時にオレの耳やらしっぽやらその他色々な場所を楽しそうに触ったが
……オレの表情が変わらなかったのを見ると、どこか残念そうな様子を見せた。
「昔負った怪我の影響であらゆる感覚神経が鈍っている、
 左右で瞳が違うのもその為」 そう説明すると納得したようだった。

「……アイツは、真っ赤になっていたな」
ふと、今日その場にはいなかった友人・ラゼットの事を思い出す。
キラ先輩はラゼットと初めて会った時、オレの時と同様、色々な場所を触っていた。
そしてラゼットが赤くなるのを面白がっていた。

「私も~お触りするっ☆ キュバートクン、相変わらずふさふさあったか~い♪」
今日もそう言って、キラ先輩は別れ際にオレの耳としっぽを触って戻っていった。
それと今日も同じ看護科の先輩の治療に対して、手当が丁寧、つまらないと
言っていた。初めて治療をする時にも「むしろ痛くしても良い」と言うような人だ。
普通は痛がるのを嫌がるものなのに……本当に不思議な人だ。



「キュバート君は気遣いを心得ているようですよ」
それから――シュレッド先輩。今日オレが治療を担当する事になった人。
今日は、そんな事を言われた。そんな事はない、自分には気遣いなど
まだまだ足りない。そう思いはしたが……事実を口に出した所で、相手は余計に
自分を気遣うだろう……そう思って言葉を選ぶ前に周りの会話は進んでいた。

あまり話をした事はないのだが、庭園科でもトップクラスの戦闘能力を持つ為
前々から知っていた。戦闘技術を学ぶ「庭園科」同士の模擬戦。
今日治療をする前に見た戦闘もかなりハイレベルな戦いだった。
キラ先輩も女性でありながら、シュレッド先輩と互角に戦っていた。
ただキラ先輩の方が傷が多かったのは、キラ先輩の戦闘服が露出し過ぎな事も
あってだろう。今日はシュレッド先輩がキラ先輩に絡まれていて、
助けなくていいかと聞いた時、アオ先輩は
「シュレッドは困るほど神経細くないから大丈夫だよ」 そう言っていた。
「キラ先輩に絡まれている時は助けなくていい」 ……そう書き加えた。



「それと今日も……」
なんとなく記録として、触られた回数を「正」の字でカウントしていたが…
既に埋め尽くされる程。尊敬している先輩の一人……看護科副長のアオ先輩。
明るく人当たりも良く、治療の手際も良いだけではなく…治療した者の心も
弾ませるような存在。オレは治療の知識や技術もまだまだだし
特に「心の治療」の面では到底及ばない。

何かと褒めてくれたり、耳やしっぽをよく触る。感覚はないが、
その繊細な手で触れられると、優しさや温かさが伝わってくるようだった。
自分に感覚があったなら、どのように感じるのだろう……そして自分に
「姉」という存在があれば、こんな感じなのだろうか。そんな事を、思う。



「……今日も自分は恵まれていたな」

ノートを閉じながら、物思いにふける。
一部の生徒からは異怖や奇異な視線を受ける事もある。そんな自分に
対しても普通に接してくれたり、優しくしてくれる人の存在が嬉しかった。

自分が庭園科に進んでいたら、また違う者との縁もあっただろう。
でも今は、看護科に進んで良かったと思う。

自分は救われた。その意味は分からないけれど。
自分も誰かを救いたい。それはずっと、変わらない気持ち。


いつかこのノートも、書き切れなくなっていくだろう。
人との関わりは……これからも数えきれない位、積み重なっていく。

……それはきっと――幸せな思い出と共に。
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